<福祉車両の選び方>種類が多い福祉車両、各タイプの特徴に合わせて最適なクルマを選ぼう

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思い立った時に、行きたい場所へ行けること。これがクルマの魅力でもある。行動半径が広がり、未知の場所で新たな発見もあるし、何より人や社会との接点も増える。こうしたクルマの魅力や利便性を、もっと多くの人に味わってもらうために作られたクルマが「福祉車両」だ。多くの人がクルマに乗り降りしやすいように、実にさまざまなタイプが用意されている。そこで今回は、福祉車両の代表的な種類を紹介。用途や状況に合わせて最適なタイプを選びたい。

 

介護式と自操式

福祉車両は、大きく二つのタイプ──介護式と自操式──に分けられる。
介護式は、身体が不自由な方の介護や送迎に使うもの。介護式もいくつかのタイプに分類される(後述)。
自操式は、身体が不自由な方が自分で運転するタイプのもの。操作系統を手の操作に集約した〝運転補助装置〟が取り付けられているものもあれば、運転者が最も使いやすい運転補助装置を選んで取り付けられるようにしたものもある。
一方、公共交通機関にある、車内に段差が少なく車いすのまま乗り込めるノンステップバス、あるいはリフト付きバスも福祉車両に分類される。

介護式:乗り込む席や乗り方がいろいろ

介護式には、乗り込む席の違いや乗り方に応じて様々なタイプが用意されている。主に以下の通りとなる。
○助手席へ=回転シート/チルトシート車、昇降シート車
○後席、セカンドシートへ=昇降シート車
○車いすのままで乗り降りできる=車いす移動車

〈回転シート車/チルトシート車〉

回転シート車は電動あるいは手動で、シートの向きが車外の方に変わることで乗り降りしやすくした。乗車の場合、乗員は向きが変わったシートに腰かけるだけ。シート操作により車内に乗り込める。

回転シート車

チルトシート車は、シートの向きが変わるだけでなくシート全体が下を向く(=チルトする)。この動きにより降車の場合は、乗員がシートから立ち上がりやすくなり、乗車の場合はシートに腰を下ろしやすくなる。

チルトシート車

回転シート、チルトシート車とも体が不自由な方でも杖などを使って自分で歩ける方や、高齢者でクルマの乗り降りに不便を感じている方にお勧めのタイプといえる。

〈昇降シート車〉

主に電動でシートの向きが車外の方に変わるとともに、車外のより低い位置までシートが下降する。昇降するシートは、乗員が乗り降りしやすい位置で止めることができるので、無理なく車いすへ乗り移ることもできる。中には、シートの位置を記憶するタイプもあり、毎回使う人が乗り降りしやすい位置にピタリとシートが止まる。

さらに、昇降するシートに介助式車いすの機能を持ち込んだものもあり、リフト機能から昇降シートを切り離して車いすとして活用できるほか、クルマのシートから車いすへの乗り移りや乗降時の車いすの収納が不要になるメリットを持つ。

昇降シート車

〈車いす移動車〉

主に家庭用の車いす移動車は、ハイトワゴンやミニバンをベースとしており、バックドアの位置に折り畳み式のスロープを持ち、スロープを使って乗り降りすることができる。乗車には車内からベルトを引き出し、車いすの前側フレームに取り付ける。このベルトを電動で巻き上げるタイプもある。一方、介助者が押して車内に乗り込む場合は、このベルトが後退防止も兼ねており、安全に乗り降りをサポートすることができる。

車いす移動車

自操式:車いすの積み下ろしを省力化したタイプも

車いすを使うドライバーや足で直接アクセルとブレーキの操作ができない方、アクセルとブレーキの踏み替えが困難な方などが、自身で運転できるようにしたタイプ。アクセルとブレーキ、灯火類の操作を集約した運転補助装置により手だけで運転できる。ステアリングは片手で操作することになるので、操作力を軽減させたタイプが取り付けられている。

ハンドルの左にあるレバー状のものが運転補助装置。さまざまな形状がある

また、両手が不自由で、アクセル、ブレーキ、ステアリング、ドアの開閉…すべての操作を足だけで行えるようにしたタイプも一部メーカーで用意している。

車いすを使うドライバーにとって、運転席に移った後、車いすの収納は力仕事の一つだ。折りたたんだ車いすを電動で吊り上げ、ルーフ上のボックスに収納できる装置も用意され、快適な乗り降りをサポートする。

車いすをルーフ上に収納できるタイプもある

 

どこで購入する? 税金の減免も

特別な装備が付いているクルマだけに、購入するのも特別なところで…? と思いがちだが、基本的に通常のクルマを購入するのと同じ。最寄りの自動車販売店で購入できる。メーカーもホームページなどで情報を提供するほか、福祉車両専門の常設展示場を設けているメーカーもある。また、販売店では福祉車両を常設している店舗もあるので、自動車販売店に相談してみよう。

そして、購入に際して重要なのが、福祉車両の機能や使い心地を当事者、介助者が一緒に確認すること。特に、車いすのまま乗り降りできる車いす移動車は、日頃使っている車いすで乗り降りを確認したい。納車されていざ乗ろうとしたら乗れない! といった最悪な結果は避けたものだ。

障がいのある方が運転するために運転補助装置を取り付けたクルマ、あるいは、車いすの使用者が車いすのまま乗り降りできるクルマは購入、譲渡、貸し付け、製作の請け負い、修理などで消費税が非課税となる。

また、自治体によって適用基準が異なるが自動車税、軽自動車税が減免される場合もある。地域の税事務所、町村役場(軽自動車の場合)、福祉の担当窓口に確認してみよう。

このほか、購入時の貸し付けや福祉車両への改造時の助成金などを設定している自治体もある。条件や金額は自治体によって異なるのでまずは問い合わせを。

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