モジュール化や共同開発でバリエーションを拡大 ~EV普及に向けたトヨタの取り組み~

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トヨタ自動車はこのほど、電気自動車(EV)普及に向けた取り組みを説明した。同社は2030年までに、ハイブリッド車(HV)やEV、燃料電池車(FCV)を含めた“電動車両”の新車販売550万台以上という目標を掲げており、この目標は約5年前倒しで達成見込みという。

世界規模で加速する“電動化”に応えるため、特にEV市場が拡大しそうな中国、米国、欧州などを中心に、EVの普及=お客様に選んでもらえるEVを用意することと捉え、EVの低コストで効率的な開発を進めている。

EVの普及には車両開発や電池の安定的な供給、耐久性の向上が必要であり、使用後の電池の再利用も考えている。さらに、車両開発に留まらず新たなビジネスモデルの構築にも取り組む。従来以上に幅広くオープンに協業を募り、この取り組みを加速させたいと考えている。

EVについては、2020年にまず中国市場に本格投入し、以降グローバルに車種を拡大し2020年代前半には10車種以上導入する計画だ。EVは乗用車タイプのほか、二人乗りの超小型タイプ、一人の乗りの歩行領域用とさまざまなタイプのEVの開発を目指している。

グローバル向けにはSUV、ミニバンなどのEVを開発
《EV普及に向けた最新の三つの取り組みについて》

EV普及に向けた主な取り組みは次の3点。①超小型EVを活用した新たなビジネスモデル構築(主に日本)、②中国、米国、欧州等に向けた様々なタイプのEVを低コストで効率的に開発、③商品力向上のキーとなる高性能電池の開発、というもの。

特に劣化しにくい電池にこだわり開発を進めている。さらに、電動車の急速な拡大に対応するため世界の電池メーカーと協業し供給体制を整備する。

■開発から廃却までカバーする新たなビジネスモデル

単なるEV開発に留まらず、社会に役立てることも考え、オープンに幅広く仲間を募り新たなビジネスモデルを構築する。具体的には販売加え、リースも増やし確実に回収。使用後の電池の状態により中古車で流通させたり、電池を補給部品やクルマ以外の用途を含め再利用し電池を使い切る。さらに、顧客向けの充電サービス、保険等商品、サービスもEVに最適なものにする。

一方、日本では、コンパクトサイズで移動距離の短い移動体としてビジネスチャンスを構築する。軽自動車よりも小さいサイズの超小型EVを開発し、来年発売を予定している。さらに小型の3輪タイプのEVも開発するほか、人が歩く範囲(歩行領域)をカバーするEVも開発。歩行領域EVはさらなるバリエーションとして、座り乗りタイプや車いす連結タイプも開発中で、ともに2021年発売を目指している。
また、新たなビジネスモデル構築のため、40団体程度の企業や自治体と検討を重ねているという。

3タイプある歩行領域EV
■他社との共同開発やモジュール化で効率的な開発

中国、米国、欧州など需要の高い市場での普及に向け、ニーズに応じたボディの大小やタイプ(セダン、クロスオーバー、ミニバン等)のバリエーションを六つまで増やす。ミディアムSUVについては、スバルと共同で企画・開発を行い、コンパクト車はスズキ、ダイハツ工業と共同企画をしている。

スバルと共同開発するEV用プラットフォームは、トヨタ社内で「e-TNGA」と呼ばれ、プラットフォームに固定部分(乗員や前後モーター、電池の位置)と変動部位(全幅やオーバーハング等)を設け、変動部位を作り変えることで複数バリエーションに対応する。また、車両の前部、中央部、後部をモジュール化し、数種類の電池やモーターと組み合わせることでさまざまなバリエーションの車両を効率的に展開する。

こうした車両の開発は、ゼロエミッションビークル(ZEV)の専門部署であるトヨタZEVファクトリーで行っている。グローバル展開のEVも、普及を念頭に置いたビジネスモデルの構築する。

■電池の開発供給について

電池の耐久性能の向上は、環境性能に優れた魅力あるEVの提供につながり、一層重要度が増している。電動車は当初の想定を超えて増え、HVやPHVに比べ容量の大きいEV用電池を数多く、短い期間で準備するため、開発と供給の両面から新たな体制づくりを進める。

これまで、電池のパートナーとしてプライムアースEVエナジー㈱を設立し、さらにパナソニックと共同で新会社を準備している。地域の様々なニーズに応えながら迅速に対応するため、世界の電池メーカー、CATL、BYD、GSユアサ、東芝、豊田自動織機と協調連携し、電動車普及をかなえる電池調達の体制を整えていく。

■開発中の超小型EVと歩行領域EV

 

◇超小型タイプ(2020年発売予定):買い物などの日常の近距離移動や近距離の巡回・訪問などの業務利用向け。
[スペック]定員:2名/全長2500㎜×全幅1300㎜×全高1500㎜程度/最高速度:時速60㎞/一充電走行距離:約100㎞

◇超小型タイプ(3輪):2輪サイズでも転倒しにくい特長を生かした近距離移動。都市部のラストワンマイル、観光地やリゾート地滞在中の外出

◇歩行領域EV・立ち乗りタイプ(2020年発売予定):空港や工場など大規模施設での巡回や警備、手荷物を持った移動向け。
[スペック]全長700㎜×全幅450㎜×全高1200㎜/最高速度:時速2~10㎞で4段階切替/一充電走行距離:約14㎞/充電時間:2.5時間(電池交換可能)

◇歩行領域EV・座り乗りタイプ(2021年発売予定):荷物の多い時に異動、歩行に支障のある方の移動に。
[スペック]全長1180㎜×全幅630㎜×全高1090㎜/最高速度:時速2~6㎞で3段階切替/一充電走行距離:約10㎞/充電時間:2時間(電池交換可能)

 

 

◇歩行領域EV・車いす連結タイプ(2021年発売予定):大規模施設や観光地で手動車いすの方へのレンタル。
[スペック]全長540㎜×全幅630㎜×全高1090㎜/最高速度:時速2~6㎞で3段階切替/一充電走行距離:約20㎞/充電時間:2.5時間(電池交換可能)