【車屋四六】トランジスタで走ろう

コラム・特集 車屋四六

断熱圧縮で発熱点火するディーゼルを除き、内燃機関は何らかの手段で点火しないと燃焼が始まらない。その点火方式も多種多様、多くの発明進化を経て今日に至っている。

近頃の主流は電子制御で、各部の調整整備が不要になり、白金やイリジュームなどのレアメタルの長寿命点火栓とあいまって実現したメンテナンスフリーも、今のユーザーにはそれが当たり前、感謝の気持ちなどさらさら無いようだ。

19世紀末発明された、ダイムラー内燃機関の点火方式はホットチューブ型…シリンダー壁を貫通する白金チューブを外部で加熱し、混合気に点火という方式だ。が、直後に登場するベンツ内燃機関はコイル点火方式だった。

1876年、仏人ルノアルールがマグネトー点火方式を発明する。それを、高電圧点火栓を発明し特許取得、商用化したのがボッシュ。以来、ボッシュの紋章は電磁石である。
その電磁石を、エンジンと一体回転して発電する高圧方式は、WWⅡ以後もオートバイやボートエンジンで活躍、レシプロ航空機エンジンでは今でも現役である。

そのマグネトー方式に対抗して登場したのが、バッテリー点火方式。エンジン回転と同期する電気接点でコイルに行く電流を断続、発生した高圧電流を点火栓に配電する方式で、20世紀前半の自動車の大半はこの方式だった。
が、高回転になるにつれ電圧低下、高電圧を各気筒に配分するディストリビュータの故障、最大の欠点は断続接点の放電損傷だった。

この時代までの車は定期的手入れが必要だった。私は自分でやったが、約1500㎞毎に修理屋や給油所で、オイル交換、グリスアップ、点火栓清掃とギャップ調整、焼損した断続接点を油砥石で磨きギャップ調整、等々調子よく走るには手入れが不可欠だった。

が、20世紀前半を支配した旧態依然とした点火システムは、60年代、普及を始めたトランジスタなど電子部品での改良が始まった。
その目的は性能向上とメンテナンスフリー。ダイオード+コンデンサーで断続ポイント損傷低減のボンファイヤーなど記憶にあるが、特に活躍したのが永井電子のウルトラシリーズだった。

有名な鈴鹿サーキット開催のエコレースで、2年連続優勝を果たした青山学院大学工学部の車もウルトラCDI搭載だった

それまではスポーツカー専用の回転計を一般車にというウルトラ回転計ヒットの後、登場したのがウルトラ・トランジスタ・イグニション/CDIだった。

その宣伝文句を受け売りすると{髙回転時の強力スパークで加速力20~30%アップ・燃費10~15%アップ・ポイント損傷デヒストリビュータ故障など点火系トラブル皆無}と自慢していた。

トランジスタ2個を放熱フィン付アルミケースに組み込み、専用高性能高圧コイル、高性能高圧コードなどのセットで1万数千円だったと記憶する。

当時、この手の商品はキラ星のごとく存在したが、効果を期待できないものも多かったが、永井のウルトラはレース場を走るほとんどの車やラリーカー御用達、性能向上を求めるマニアの車に普及し、海外にも輸出されて好評を得た。

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