【車屋四六】高級ゼンマイ時計の復活

コラム・特集 車屋四六

{○○界のロールスロイス}という表現がある。それぞれの分野で、歴史と品質最高というような意味で使われる。

例えば、写真機ならライカだろうが、いずれニコンが認知されるかも。女性用バッグならモラビトやエルメス、宝飾ならカルティエやショウメ、クリスタルならバカラ、日本刀なら正宗だろうか。

セイコーがクオーツを開発発売したことで、18世紀からのゼンマイ時計がトドメを刺されたと、世界中の時計ファンは思ったが、それは浅はかな判断だった。

21世紀に入り強かに息を吹き返し、元気を取り戻し、特に高級ゼンマイ時計が元気で、加えて一流時計師による新工房の作品も毎年新作を発表、元気一杯である。

その代表格がフランクミューラー、またダニエルロートなどはどれも半端な値段でないのに驚く。またトールビヨンなど複雑メカ時計も高級時計各社のカタログに載るようになった。

トールビヨンは、マリーアントワネット贔屓の天才時計師ブレゲーの発明だが、時計技術を一気に100年早めたと云われる彼が、地球重力による姿勢誤差を取り除こうとのメカだったのである。

昔から時計はスイスというように、インターナショナル、オメガ、ロレックスなどが有名だが、歴史ある時計業界では老舗ではない。流行により、我々が知らない高級品も続々登場している。

昔からスイスの一流と云えば名が出てくるインターナショナル:1960年代の18金製

一方、ヴィトン、グッチ、シャネルなど別業界一流品の名を冠する一群もあり、また、ティファニー、ブシュロン、ブルガリ、バンクリーフアーペルなど名門宝飾屋のもある。
が、ピアージェやカルティエ、ダンヒル等は、時計業界としても品質歴史が認知された両刀使いである。

さて「時計のロールスロイスは」と聞かれたら、私の答えは「パテクフリップ/PF」だ。現存業者で歴史的にはプランパンの創業1735年が古いが、20世紀に休眠時期があり、創業以来という点なら、近頃フランス読みでバシュロンコンスタンタンと呼ぶ、バセロンコンスタンチン1755年が最古の歴史を誇る。

ブランパン:創業最古1735年を誇るブランパンのオートマチックモデル

さて、車と時計、世界は違うが、RRとPFには共通点がある。
英国貴族ロールスと技術屋ロイスが出会ってRRが誕生。一方、ポーランド貴族パテクと天才時計師フィリップが出会って1851年に誕生したのがPFなのだ。

当時、時計のゼンマイは外から鍵で巻いていたが、現在の竜頭巻を考案したのがフィリップで、ロンドン万国博覧会で金賞受賞。早速ビクトリア女王お買い上げに。

で、英王室御用達の信用はたいしたもので、オーストリア女王、独ウイルヘルム大王も早速顧客に。また、ワグナー、チャイコフスキー、スターリン、トルストイ、ディズニーなど、PF社の顧客名簿には蒼々たる名前が並んでいる。
年商5000億円でヤオハン全盛の頃、東南アジア進出で合弁相手の、タイガーバームで知られる香港の富豪胡文虎から和田社長に贈られたのもPFだった。

写真(右)は、ブレスレット一体型18金ホワイトゴールド製PFカラトラバ。一流時計師が、物によっては半年、一年、それ以上を掛ける手作り品、高いのも止むを得ないことだろう。

自動車と時計、ジャンルは違うが、共通点は、高品質高性能にこだわり、安物を造らず、量産せず、今日の信用を築き上げたこと。

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