【車屋四六】ポルシェ928はスーパーカー

コラム・特集 車屋四六

その昔、スーパーカーブームというのが日本にあった。
70年代の中頃だったろう、スーパーカーがあれば、日本中の子供達が親にせがんで遠方まで出掛けたものである。

フェラーリ、ランボルギーニ、ロータス、ランチャ、マセラティ、デトマソ、トヨタ2000GT、アルファロメオ、ずらりと並んだ夢の車に、少年達は目を輝かせていた。

ポルシェも、そんなスターの仲間で、911や928,また928用V8の片バンク四気筒搭載の944なども人気の中心だった。(トップ写真:晴海の東京モーターショーに展示されたポルシェ928)

そもそも928が誕生したのは1977年だった。
77年で思い出すのは、756本のホームラン世界記録樹立だが、更に国民栄誉賞に輝く王貞治は、866本まで記録を伸ばした。

928試乗車、撮影場所は思い出せない

VWがビートルの脱皮で苦労したように、70年代のポルシェは、後輪駆動911の強烈な印象からの脱皮に苦しんでいた。
356から911で人気を得たあと、磨き上げたRRの技術的限界を感じて、当時のポルシェはFR転換を目論だのである。

が、スポーツカー最大市場の米国の強烈な911フリークは、911以外を受け入れなかった…ミドシップ駄目、VWやアウディの部品でVWと共同開発の924も駄目。米国の911フリークは何を持ってきても、ポルシェと認めなかったのだ。

ならばポルシェの工場でポルシェの部品とエンジンで、と誕生したのが944だったが、それなりのファンは掴んだが、911フリークは相変わらずソッポを向いたままだった。

が、ポルシェの経営陣も頑固で我慢強かった。再三のシッペ返しに「これでどうだ」と持ち出したのが928で、77年登場の翌年には欧州カーofザイヤーの栄冠に輝いた。

全長4520x全幅1830x全高1282㎜・WB2500㎜・車重1580kg・心臓は米国人大好きなV型八気筒・DOHC・4.5ℓ/240馬力だったが、ベンツSLやフェラーリなどとの戦いで最後は5.4ℓ/350馬力に。

輸入元三和自動車の報道発表会で「大きなスポーツカー」と云ったら、ドイツの開発担当者は「スポーツカーではないラグジュアリーなGTです」と回答した。

928は、それなりに成功したが、やはり911との交代は果たせず、後輪駆動の911は未だにお化けのように人気を持ち続けている。

その後、ポルシェは80年代経営危機に遭遇したが、無事乗り越えた。しかし928は、95年をもって生産が中止された。
谷田部高速試験場で時速280㎞を超え、大柄ゆえのゴージャスで落ちついた乗り味は、今でも懐かしく思い出される。

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