【車屋四六】世界初ガソリン用内燃機関ダイムラー誕生

コラム・特集 車屋四六

19世紀は蒸気機関の世紀、20世紀は内燃機関の世紀と云える。その内燃機関は、ダイムラーとベンツが、お互い何も知らずに、わずか150㎞しか離れていない町で開発に没頭していたのだ。どちらが先?と云えば、僅かだがダイムラー、エンジン完成が1883年、85年に走ったオートバイは史上初のガソリン自動車誕生ということになる。

一方、ベンツの車が走ったのは半年遅れの86年だったが、自動車としての完成度ではベンツのほうが優れていた。で、歴史的に見れば世界初はダイムラーだが、両者ほぼ同時で良いだろう。

ダイムラーの小型高速回転エンジン(写真トップ)完成の86年は明治16年、鹿鳴館が麹町に完成、東京の街を走る鉄道馬車が走りながら撒き散らす馬糞が問題化した年だった。

さてゴットリーブWダイムラーは1834年パン屋の生まれ。子供の頃から機械好きで、鍛冶屋で修行のあと工科大学へ。工科大学を卒業して蒸気機関車工場に就職後、フランスから英国に留学…当時英国は、機械技術では世界最先端だったのだ。

帰国するとガスエンジン工場に就職。終生の友となるマイバッハに出会い、協同でオットーサイクル・ガスエンジンの開発に成功すると退職して1881年に独立する。

目的は、理想的エンジン開発で、マイバッハも一緒だった。
目指すは小型高回転エンジン。動騒音が激しいオットーサイクルは高さ3m、150回転で3馬力が限界という、大きく重い低性能動力だったのだ。

で、先ず開発に成功、特許を取得したのがホットチューブ。燃焼室に差し込んだ白金のチューブを外部からアルコールで加熱する部品で、これで回転が一気に1000回転に上昇した。

更に特許を幾つか加えてエンジンが完成。それを小型にして木製オートバイに搭載し走らせた史上初の自動車は、空冷直立単気筒263cc・0.5馬力/600回転、最高速度12㎞だった。

ダイムラーの木製オートバイ:ベルト駆動で補助輪付だから一人乗り四輪車とこじつけることも出来そう

次ぎに462cc・1.1馬力/800回転を完成、馬車屋に作らせた車に載せて時速18㎞で走ったのが1886年。が、ベンツの開発目標は自動車だったに対して、ダイムラーの目標は違っていた。

ダイムラーの目標は、多方面で使うことだった。86年ネッカー河をモーターボートで高速走行して人々を驚かせ、87年気球で空を飛び着陸に成功して飛行船の将来に道を開いた…ちなみにライト兄弟の飛行成功は1902年。

世界初のモーターボートは好評で海軍や警察御用達になり、1900年には、ツェッペリン飛行船が完成飛行に成功する。
このように、ダイムラーのエンジンは、陸に海に空にと発展していったが、これが有名な星のエンブレム{スリー・ポインテッド・スター}誕生により象徴されるのである。

ダイムラー初の本格的四輪自動車:サスペンションやホイールを見れば完全に馬車の構造である

 

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