【車屋四六】初代プレリュード1978年

コラム・特集 車屋四六

80年代のプレリュードは、若者、中年、憧れのスポーティーカーだった。トヨタや日産、ライバルメーカーが、束になってかかっても勝てないダントツ人気車だった。

そんなプレリュードも、78年登場の初代プレリュード(写真トップ)は、斬新さとは裏腹に、人気は不発のまま終わった。プレリュードとは音楽用語で“前奏曲”だから、爆発的人気の次世代登場の前奏曲だったと受け取ればよいのかもしれない。

78年という時代は、石油ショックも通り過ぎて、日本株式会社が力を付け、世界を目指して好調に業績を伸ばしている時期である。国内ではマイカーの普及が進み、乗用車に個性を求めるようになり、ジャンルの多様化が進んた。

「ユーザーの選択が厳しくなりひと味違った車を求める時代の試みとしてプレリュードを戦列に加えた」は、新車発表会での川島社長の挨拶だった。

発表時のグレードは四種類。XT=116万円、E=126万円、XR=138万円、XE=140万円。AT=プラス3万円。エアコン=プラス17万円という価格構成である。

首をかしげたのは贅沢装備のオプション選択が車種まちまちに限定されていたこと。パワーステアリングはXEとE、パワーウインドーはXEのみ、アルミホイールはXRのみ、スライディングルーフがXTのみと。

ちなみに、プレリュードの電動スライディングルーフは日本初採用。もっとも手動なら日本初はセリカXX。ヨーロッパ車を見て憧れていたユーザーには嬉しい贈り物。が、本場アメリカ車には設定がないのが不思議だった。

写真の背景は東京駅だが、近頃こんな所での撮影は難しい。現在東京駅は、初期の姿に復元中だから、数年後にはドーム屋根になり、この尖った屋根は貴重な姿になるだろう。

ホンダらしいアイディアはインパネ。速度計と回転計が同軸。本格的に攻め込むスポーティードライブには不向きだが、コンパクトにまとまり、視線を移さずに一目で視認できる便利さがあった。

ATは、といっても、世界の特許から逃げたホンダ独特のホンダマチック。変換比が大きなトルクコンバーターで無段変速実現。といってもLとスターで、Lではゼロから90㎞あたりまで、スターではゼロから160㎞オーバーまでをカバーした。

加速は緩慢で、急ぐ時にはLで引っ張ってから、スターレンジにシフトする。現在のCVTに似ているが、加速も燃費も比較するような代物ではないが、当時としては画期的ATだった。

エンジンは触媒なしで排気ガス規制をクリアの、ホンダらしいCVCC方式のEK1750cc。95馬力だが、900kg前後と車重が軽いことで、MTの走りならキビキビ感があった。
5MTで、ゼロヨン18秒、AT19秒は、当時としては問題ない加速感だった。

プレリュードの魅力は何といっても、姿のスポーティーさ。ロングノーズ&ショートデッキ、幅広感のある低いシルエット。が、いざ乗ってみると、ルーフの低さが目立ち、特にスライディングルーフでは、胴長短足の私の体形では頭がル-フに触れるほどだった。

斬新なスタイリングを採用したプレリュードは、走ればどんな車でも良い、という時代から、好みで車を選ぶという時代が到来する、過度期的作品だった。

プレリュードのインパネ:スピードメーターの内側にタコメーターが。スポーティー感演出のレイアウトだ