【車屋四六】サバンナ・スポーツワゴン

コラム・特集 車屋四六

乗用車用ロータリーエンジン(RE)を最近まで量産していたのは、世界広しといえども、我等がマツダである。

その昔マツダは、RE搭載のステーションワゴンを発売したことがある。名付けて、サバンナ・スポーツワゴン。

そもそもサバンナは、コスモスポーツ発売以来“ロータリゼイション”の旗印の下、全社一丸となってRE化に取り組んだマツダ五番目のRE乗用車。しかもRE搭載専用車として開発された特異性をもつマツダの乗用車だった。

サバンナは、鈴鹿の日本グランプリ以来、日本中に燃え広がるモータースポーツの熱気に応えて生まれたから、腕自慢の走り屋達にはよだれが出る憧れの車となった。

そのサバンナが、一躍名を上げたのは71年12月。FISCOの“富士ツーリストトロフィーレース”。フルコース6㎞を133周のレースで、それまで連勝街道を突っ走るスカイラインGT-Rに、遂に土を付けた時からである。

しかもこのレース、GT-Rが国内レース50連勝という大金字塔に王手を掛けていたのだから効果抜群、強烈なインパクトを与えたものである。

そんなイメージを背負って登場したのがサバンナ・スポーツワゴンだったのだ。全長4085x全幅1595x全高1405㎜。ホイールベース2310㎜。車重905kg。

注目の心臓REは、491ccx2ローター、圧縮比9.4、105ps/7000rpm、13.5kg-m/3500rpmという性能。変速機は常識的4MTで、当時5MTはサバンナGTだけの物だった。

この10A型REの実力はたいしたもので、ステーションワゴンを難なく170km/hという高速に引っ張り上げたものである。ちなみに当時最速と云われたサバンナGTの最高速は190km/h。

マツダ自慢のREエンジン:491ccx2=982cc=105馬力。コンパクト軽量、高出力で高性能をほしいままにした

サバンナクーペ180km/h、セダン170km/hという顔ぶれから見れば、ワゴンで170km/hは感心する韋駄天だったことが判るだろう。が、残念ながら、営業的には失敗作となった。サバンナワゴンは、72年に登場して73年には生産終了という短命だった。その原因は、スタイリングにあったと思う。 マツダのデザイン力は昔から評価が高い。なのにスポーツワゴンと見栄を切りながら、グランドファミリアのバンとボディーを共用するという中途半端な手法が災いしたのだと思う。

コストダウンもけっこうだが、名前と性能にふさわしいスタイリングにすべきだった。スポーティーな魅力が、何処を探しても見当たらないのでは、売れるはずはなかろう

もし名前にふさわしく、誇らしげにREを思い起こせるような姿なら、結果は変わっていたと思う。最後のRE搭載車はRX-8だが、後部をストレッチしてワゴン仕立てにすれば、魅力的ステーションワゴンになると思うのだが。

スポーティー感十分なスポーツワゴンのインパネ

このスポーツワゴンが誕生した72年=昭和47年。この年登場した日本車は、MK-II、レビン&トレノ、ローレル、スバルREX、マツダシャンテ、シビック、スカイラインC110、ミニカF4、ルーチェ、ホンダ145、11車種。

日中国交回復でパンダブーム、連合赤軍事件、冬期サッポロ五輪。グアム島で発見の元陸軍兵士・横井庄一帰国「恥ずかしながら」の発言が流行語に。カーラジオからは♪瀬戸の花嫁♪結婚しようよ♪喝采♪旅の宿♪などが流れていた頃である。