車屋四六】骨董的自動車の復権

コラム・特集 車屋四六

“温故知新/オンコチシン”古きを温めて新しきを知る=古いことから新しい情報を得る。古い諺だが、世界中、どのジャンルにも骨董マニアという人達が存在する。

書画骨董といえばその最たるものだが、切手、煙草の箱、ブリキの玩具、はたまた牛乳瓶の蓋など、常人には取るに足らぬ物でもマニアには宝物。

写真機などもコレクターアイテムだが、近頃ではゼンマイ時計も復権。一時クオーツに押され淘汰されかけたが、しぶとく生き返った。日常生活に正確な秒単位が必要な生活ならいざしら、こつこつと動き続けるゼンマイ時計には暖かみがあり、ロマンを感じる。

自動車も同様。クラシックカーという骨董趣味は伝統有るものだが、それは欧米の金満家の趣味だった。戦後自動車産業が育ち急発展中の日本にはなかった。が、戦後も50年近くを経てバブルが膨らむと、遅ればせながら骨董自動車に興味を示し始めた。もっともバブル絶頂期には投機目的、とても趣味とは云えないものもあったが。いずれにしても良い状態で後世に残せれば、目的が何であれ良いことではあるが。

伝統在る欧米では、時代別にヴィンテージ、エドワーディアンなど、堅苦しい取り決めがあるようだが、伝統無しの日本では、30年も経てば、それ以前も含めてどれもクラシックカーで通用するようだ。曖昧な日本人得意の特技”十把一絡げ”というやつだ。

日本でも遅ればせながら、私財を投じた個人の収集品展示が其処此処に、嬉しい限りである。それに法人の大規模コレクション展示も目を楽しませてくれる。

クラシックカーレース出場のジャガーSS100:素晴らしいコンディションでワイヤーホイールが美しく輝いていた

トヨタ博物館は世界的規模でトップレベル。石川県小松の日本自動車博物館は日本最大級。ホンダの博物館も見応え充分。個人では松田コレクションや河口湖自動車博物館、九州自動車博物館、また那須自動車博物館も楽しい。まだまだある。

写真機や時計もそうだが、クラシックカーも飛行機も動態保存と云って、コンディションの良さと共に動くことが最上である。が、日本の博物館は走れないのもあるようだ。また動いても、僅かな入場料で走らせてくれるようなお人好し博物館は少ない。

“走らない車なんて”というと似たようなコマーシャルを想い出すが、生き生きと走る骨董自動車は楽しいものだ。やはり排気音が聞こえてこそ生きていることを身近に感じるのである。街で得意げにマニアが走る姿に遭遇すると、今日はラッキーと嬉しくなる。

どうしても見たければ、各地で開催される愛好家のミーティングを探して、写真機を持って出かけるしかないだろう。いっそうのこと海外まで出向く気があれば素晴らしいイベントが沢山ある。

日本から近いところでは、毎年開催されるマカオグランプリ。そのヒストリックカーレースは、セナやシューマッハが優勝したF3レースより、私には楽しかった。

私が毎年通っていた90年頃の写真を紹介する。1930年代頃からの古いスポーツカーが、豪快な排気音を撒き散らしながら走る姿は楽しいし、興奮がこみ上げてくる。

当時マカオの冠スポンサーは三菱とマールボロ。三菱車(ランサー)のワンメイクレース、ジャッキー・チェン トロフィーレース表彰に来場のジャッキー・チェン(右から4人目)。周りは内外のイベントに広報活動で活躍の三菱P’sレディー