【車屋四六】昔ボルボは外貨稼ぎの優等生

コラム・特集 車屋四六

WWII後に発売したボルボPシリーズは、戦前設計のダルマ風スタイリングのフォードにそっくり。50年代は、そんなダサイ姿のボルボがアメリカで人気者。VWビートルに次ぐ輸入量を誇った。

人気の元は、独特な姿ではなく、10万マイル(16万キロ)走れると自慢するエンジンと安全頑丈が受けたのである。(写真トップ:アメリカではスポーツカーの仲間入り:カリフォルニアの飛行場を閉鎖したSCCA(スポーツカークラブofアメリカ)のレースでジャガーやMGを急追するボルボPV。57年頃)

信頼性を誇る5ベアリングエンジン搭載のPV444/544は1600㏄で、85馬力とクロスレシオのギアボックスで最高速度155㎞、ゼロ100キロ加速15秒という俊足で、スポーツカーレースの常連でもあった。

が、高性能,スポーティー、頑丈と三拍子揃ったボルボも、時代の経過でスマートな戦後のライバル達に囲まれて古さを気にするようになる。ようやく重い腰を上げて開発したのがP120型アマゾンで、1956年の登場で旧型と併売を始めた。

新しいボルボのエンジンは旧型の流用だったが、モノコックボディーのスタイリングは、打ってかわって斬新に変身した。この新ボルボに66年、私はひょんなことから関わりを持つのだが、その話は後回しにしよう。

さてアマゾン65年頃の諸元は、全長4450㎜、全幅1620㎜、全高1505㎜、ホイールベース2600㎜。車重1090㎏。ツードアとフォードアがあった。

56年登場当時よりエンジンが大きくなって、水冷直列四気筒はB84.1xS80.0㎜で1780㏄に。エンジンは二種類。国内仕様が75ps/4500rpm、14.5kg-m/2800rpm。4MT。輸出仕様は90hp/5000rpm、14.5kg-m/3500rpm。輸出はアメリカ主体なので、上質な燃料が使えることと高性能のアピールで、高出力が必要だったのだと思う。

ちなみに私が愛用の54年型ジャガーMK-VIIも、180馬力と160馬力二本立は先進国向けと低開発国向。残念ながら日本向けは160馬力だった。私はキットで180馬力にしたが。

アマゾンには123GTと呼ぶスポーティーモデルがあり、電気式オーバードライブを装備、ステアリングから手を離さずにスイッチで切り替操作。私のジャガーMK-IIにも標準装備だったし、オースチンヒーレイ100にも後付で付いていた。変速機は三速か四速という時代、変速機の外に一段ギアを付ける電気式OVDは50~60年代に外国で流行っていた。

ボルボP120アマゾン:この時代日本では未だマニアの車で、一般的ブランド力は低かった。ベスドラ最終選考登場車と同型車。(日本ボルボ配布写真)

輸出モデルの前輪はディスクブレーキ。四輪コイルスプリングで前輪がWウイッシュボーン、後輪はラジアスアームのリジッドで、悪路でのロードホールディングには定評があった。

その頃日本でのボルボはマイナー的存在。少量輸入されるのはボルボ愛好家のため。現在のブランド志向的ユーザーではなく、ボルボを良く知り尽くしてのファンばかりだった。

シェル石油の代理店で戦前から大手の細山太七商店。そこの御曹司で細山和夫は、私とは慶大で二年先輩。早逝したのが残念だが、くるま好きで当時はアマゾンのオーナーだった。

話変わって、だいぶ前に日本ベストドライバーコンテストで優勝した話を紹介したことがある。地区予選のラリー、ジムカーナをサニー1000で勝ち抜き、全国大会に出場、優勝して日本一の運転手になった私の数少ない自慢話である。

その全国大会での実技試験は、小金井の試験官も呆れる難しいコースだが、公平を期するために誰も乗ったことがないであろう、乗用車が選ばれていた。

ほとんどの人が乗ったことがないとなれば、輸入車の中でもマイノリティー的存在の左ハンドル車ということになる。で、私の年は、細山先輩のアマゾンだった。

試験車がアマゾンと発表されると、勝ち抜いて全国大家出場の猛者達の顔に不安さが浮かんだのを見て、私はしめたと内心ほくそ笑んだ。というのも、当時の私は給油所+修理工場が商売。国産車より輸入車の方が多かったので、外車で尻込みしていたのでは商売にならない。実際に、アマゾンにも何度も乗っていた。

加えて実地試験の後の論文作成も、二足のワラジでの物書き家業。一時間1000字の論文も、起承転結は日常茶飯事、最初の一行が浮かべば、あとは一気に書き終えて、優勝で目出度し目出度。

ボルボはスエーデンでは大企業だが、乗用車部門を99年にフォードに売却。が、21世紀に入ると世界的に人気が下降、加えてリーマンショックによる親会社フォードの事業内容悪化で、現在、GMのサーブと共に、ババ抜き相手を物色中。

ボルボPV445ステーションワゴン53年型:個人的資料でステーションワゴンの元祖は30年代半ばのフォードだが、欧州ではボルボが古くから活躍を続けた