【車屋四六】輸入禁止で値段急騰

コラム・特集 車屋四六

1954年までなら、2年間使ったら中古車なのに、輸入禁止の55年以降は、新車で240万円だったポンティアックが三年目新車になって、500万円にもなってしまった。輸入車の中では常に最高人気の高級車キャデラックも、ヤナセで350万円だったのが、三年目新車で700万円前後に跳ね上がる。

第93回で登場の、二年目新車のキャデラックのアメリカでの値段は約5000ドル=当時の為替レートで180万円。それが日本中にたった1台とはいえ、1900万円というベラボーな値段で売れるのだから、ブローカー達にはそれこそ”棚からボタ餅”で旨い汁は吸おうじゃないかということになる。

まあ5000ドル=180万円といってもアメリカでの値段だが、当時日本の輸入車に掛かる関税は、ホイールベース120吋(インチ)以上82%、以下63%。キャデラックのヤナセでの販売価格350万円は、諸掛かり、適正利益を加えたものである。

それが輸入禁止でブローカー達の活躍が始まると、彼らが扱う二年落ち中古車、云いかえれば三年目新車が、新車の倍以上に跳ね上がってしまったのだ。

が、ブローカー達だけが”坊主丸儲け”ではなかった。新車を買ったオーナー達は、当初は”使えば安くなる”の常識通りの値段でブローカー達に売り渡していた。で、ブローカー達は”坊主丸儲け”的商売に浮かれていたが、そんな時代がそう続くわけもない。

やがて自分たちの中古車が、日本のユーザーに渡る時の値段を知り、駐留軍関係や外交官たちが日本の特殊事情を理解する。と「旨い汁を日本人だけに吸わせることはない」旨い汁は一緒に吸おうじゃないかとなるのが当然。

その頃から、米軍基地の中で、どう転んでも裕福には見えない若い兵士、黒人兵がピカピカの新車、それも誰が見ても身分不相応なキャデラックやパッカードに乗る光景を見かけるようになる。

が、彼らのピカピカ新車を良く見ると、ホイールカバーをトランクにしまいこみ、ステップには傷が付かぬようガムテープ、これはやりすぎと思ったのはブレーキやクラッチペダルにもガムテープ。更に過激派が居て、ペダルのゴムも外してトランクに放り込み、ムキ出し鉄板を踏んでいる奴らさえ居た。もちろん床のカーペットも剥がしてトランクに。とにかく無傷で新車に近ければ近いほど売値が上がるための努力だった。休日には、これまではやったこともないであろう洗車やワックス掛け、などという風景も基地の中で見られた。

昭和30年代後半になると、車なら何でもいいという時代が過ぎて、アメ車と共に人気があった欧州製小型車の人気が下降。外車といえばキャデラック、リンカーンなどの高級車ばかりか、フォードだろうがシボレーだろうが、アメリカでは大衆車でも日本人には高級車で、引っぱりだこで売れていった。

が、欧州車の人気下降といっても、MGやジャガー、トライアンフといったスポーツカーは、相変わらずの人気者。が、58年頃だろうか、ふと気が付くと梁山泊でベンツの人気が出始めていた。

それまでドイツ製の知名度は低く、ヤナセでのベンツは主力車種の220型などが230万円ほどと比較的安値感覚だったのに、人気は低かった。が、57~58年頃になると、人気が出て転売目的の新車オーナー達もこぞって手を出すようになる。同時に、ヤナセで300万円ほどだった、ベンツの大型高級車300型が、いつの間にかキャデラックを越える値段で取引されるようになった。

ベンツ300型ハードトップ1958年:アメリカでのハードトップ流行によりベンツも開発したが、三角窓を残してあとの窓が全部消えるというシックスライト・ハードトップに世界が感心した

ステイタスを確立したベンツ300型は、キャデラック、リンカーンより100~200万円高い値段、800~900万円という高い値段で取引されるようになる。

53年頃から、ベンツ同様ヤナセが輸入を始めたVWも認知されるようになった。が、逆に、かつて日本市場で大人気のオペルや独フォードの人気は下降。BMWも人気が出るのはもう少し経ってから。

日本人のベンツ好きは、どうやらこの頃から始まったようで、シボレーやフォードより小柄なベンツ220Sの人気がで始めると一流企業の重役も乗るようになる。54年頃の300型は、直六3リッターOHCで115馬力、大柄な車体を160km/h以上で走らせることが出来る、大型高級車だった。

人気の高級車だけに古くなっても値下がりが少なく、九年ほどを経過したベンツ300型を、八王子の資産家にお世話したことがあったが、金100万円也の領収証を持参して納車に行った。

ベンツ219型1956年:55年頃から人気上昇したのが200シリーズ。ヤナセ扱いは最上級200S。写真はヤナセ扱いではない219型。東和映画の川喜多社長専用車を私が買って暫く乗った

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