【車屋四六】“たられば”が許されるなら・日本だって

コラム・特集 車屋四六

内燃機関が登場、熱気球、飛行機、飛行船、もちろん自動車、いろんな所に話が脱線したが、日本が出てこなかった。今世紀初頭、運の神様は、この近代的機械文明、特に空の機械については、東洋の離れ小島には興味がなかったのだろう。

だが、日本にも空を飛ぼうと研究し、努力を積み重ねた人はたくさん居た。一方で、日本を率いる偉い人達は、ぬるま湯に浸かりながら、旧態依然の事なかれ主義で、日々を送るのが無難と考え実行していた。

今の役人達にもそんな風情が見られるが、日本人は本質的にぬるま湯生活が好きな人種なのかもしれない。

イギリスでは平和主義の学者でも、風船を見て「こいつに兵隊を乗せて攻めたら」と考え、戦争が好きなナポレオンは当然のように、兵隊を乗せて難関のドーバー海峡を渡ろうとした。

ところが咸臨丸でアメリカに渡った幕府のお偉方は、本来戦が商売の武士のくせに「空高く上がるだけで役に立つ物ではない」と報告書を書くのだから、目の付け所、受け取る感性が西洋人とは根本的に違うのである。

だから、日本も時代時代のお偉いさん達が先を読めたなら、飛行分野でも世界を驚かせたかもしれないのだ。

世界初飛行の成功は日本?二宮忠八の飛行機は、低翼一枚翼で斬新極まりなく、模型とはいえ、ゴム動力で自力滑走で離陸したのだから、忠八の飛行理論、機体構造は完璧だったといえる。(写真トップ:二宮忠八の飛行機:欧州人流の鳥の羽ばたきには目もくれず初めから固定翼を開発、飛行に成功。もし陸軍が資金援助をしていたら、世界初飛行は日本だったろう)

が、忠八の飛行は模型実験だけで終わってしまった。人が乗って飛ばす実用機の図面を完成して、製作援助を陸軍に申請したのだが、断られてしまったからだ。

申請却下の理由は簡単だった「これまで飛んだこともないものに金は出せない」だった。今に続く、事なかれ主義の役人根性丸出しの回答である。

そもそも、二宮忠八の模型飛行機が飛んだのは、ライト兄弟初飛行の十数年前だから、もし陸軍が援助を決断していれば、世界初飛行の栄冠は、日本人に輝いたことだろう。

このあたりは、エンジンが入手できなかった、ドイツのリリエンタールに似ている。エンジンがあれば、世界初は、日本人かドイツ人のどちらかだったと考えてもおかしくないのだ。

いずれにしても、二人とも飛ぶ自信があるのに金がない、エンジンがない、で悔しい日々を送るうちに、ライト初飛行のニュースが伝わってきたのだから、さぞかし悔しかったろう。

幕府には、伊能忠敬に日本地図作りを命じた役人も居たのに「高く上がるだけで能なきもの」と報告した幕末の役人、そんな気質は明治維新になっても生き続けていたのだ。

もっともWWII直前に、名将山本五十六が「これからは航空戦が勝敗を決する」と提言しても、相変わらず大艦巨砲主義を続けた海軍のお偉方。革新兵器開発より精神論で戦争を始めた陸軍。とにかく日本のお偉方達は、今でも頓珍漢な行政を平気で続けている。自分だけの保身安泰を考えて。

役人ばかりではない、民間企業でも基礎開発をおろそかにし、外国で素晴らしいものが生まれ「しまった」と思っても慌てないところが日本流。で、すぐに大金を持って外国に跳び、特許を買ってくるのである。

でも、その後は素晴らしい。知恵を絞り、買ってきた特許製品を改良、研ぎ澄まし、たちまち本家を越える品物に育ててしまう。ということは、日本人には、知恵も、技術もあるのである。

バブル型キャノピー、そして空戦時には切り離す胴体下の補助燃料タンクは、世界初日本独自のアイディア。写真は多分ラバウル基地を離陸直前のゼロ戦。胴体下に落下型増加タンク

そんな知恵と技術を、基礎研究、開発に振り向ければ、世界をリードする製品が生まれ、無駄な大金を外国に捨てる必要もない。

WWII前、世界で初めて、TV映像の無線電送に成功したのは日本人。WWII前、レーダー開発で日本の技術は世界最先端だったが、軍部の判断の誤り、そして横の連絡がない縦割りの開発でモタモタしているうちに欧米で発展して、日本軍はひどい目に遭うのである。

戦後、米軍の超短波アンテナに興味を持った日本の技術屋が「あれはどんなものか」と聞いたら「WWII前に日本人が発明した八木アンテナではないか」と笑われたそうだ。

トランジスタの出発点、ダイオードも日本人。LSIを考えてアメリカに発注したのは日本人。見慣れたウインドウズの元は日本人の開発。どれも商品化には繋がらず、オイシイところは持って行かれてしまった。

ジェット戦闘機で見慣れた翼の下の燃料増加タンク、世界初は日本のゼロ戦。今では常識の視界良好な操縦席のバブル型風防も日本の発明で、ゼロ戦、隼を捕獲した米軍が直ぐに採用。戦闘機に機関砲というのも、ゼロ戦が初めてのはず。

幕末に役人が馬鹿にした気球だが、それに爆弾を結んでアメリカ本土攻撃をした風船爆弾は日本人のアイディア。が、爆弾で飛行機や船を造り、兵隊が操縦して突っ込んでいくというのは、日本人の頂けない発明だ。

日本人は優秀な民族だと思う。21世紀はそれを生かせるシステムで動いて欲しい。「しまった」と叫んで金を持って買いに行く、などは20世紀で終わりにして欲しいものだ。

ノースアメリカンP51戦闘機:手前初期型はストレート型キャノピー。アリューシャンに不時着した日本戦闘機を捕獲、試験飛行後すぐにバブル型に変更(奥)。奥2機は改良バブルキャノピー型

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