【車屋四六】フィアットvsロールスロイスの結果は

コラム・特集 車屋四六

前回は、競争のせいで、飛行機の速度が飛躍的に向上したことを報告したが、それはエンジンの馬力向上競争でもあった。

速度の向上ぶりを並べてみると、後半は水上機のオンパレードだと気が付くだろう。理由は簡単。高速機を離陸させるためには、長い滑走が必要になったからなのである。

が、当時の陸上に、そんなに長い滑走路はなかった。幾らでも滑走できる所といえば水上しかなったのである。もっとも水上に機体を浮かすフロートが必要で、こいつが大きな空気抵抗を発生するが致しかたないことだった。

長い滑走が必要なのは、未だフラップが発明されていなかったからだ。スピードを出すために、機体の胴体はエンジンの横幅と操縦士の横幅までは細く作ることが出来るが、機体を浮かせるためのフロートは、水上での左右の安定も含めて、一定の体積と幅が必要で、小さくは作れなかった。

で、飛躍的に馬力を上げても、それほど速度は上がらない。昔、ゼロ戦を開発した堀越二郎が「単純に同じ飛行機の速度を二倍にするには四倍のパワーが必要になる」と云っていた。それで、上記の謎は解けるだろう。

私が長年飛ばせてる軽飛行機でも、引っ込み脚は除いて、固定脚の脚は、一本で5マイルほど速度が落ちると聞いた。飛行機の1マイルはノットで1.8kmだから、一本で9kmのダウン。で、古い二本足で18km、近代型三本足では27kmも速度が低下するという単純計算になる。

アントアネット号:欧州で初飛行に成功したブラジル・コーヒー王の息子サントス・デュモン(体重50㎏)三作目の機体。映画では小柄な女性パイロットを探して飛行させた

メッサーシュミットは速度に反比例して急激な馬力低下に気が付くが、こいつはフラップの発明で、大きなフロートが不要になった陸上機だからの結果なのである。

水上機レーサー最後の3100馬力などは、既にエンジン開発でも限界を超えて、V24気筒といっても、既存のV12気筒を縦に繋いで、後側のエンジンは、前側エンジンのDOHCの間を通したシャフトでプロペラを回していたのである。

もちろん、プロペラは二重反転型だから、言い替えれば双発型と云えなくもない。しかも、胴体は可能な限り細く作ってしまったので、完成したら男のパイロットではコクピットに入れず、小柄な女性パイロットを探して飛ばしたそうだ。

この辺りは、既に前例を紹介したように、サントス・デュモンのアントワネット号を、映画「華麗なるヒコーキ野郎」で復元した時に、女操縦士を捜した事実もある。機体はテーラーメイド的特注機らしく、体重50㎏のヤサ男、デュモンに合わせて作られていたからだ。

いずれにしても、ゴードンベネット杯、デーリーメイル杯、ピュリッツアー杯、トンプソン杯、ベンディックス杯など、多くのスピード競技により飛行機はドンドン速くなったが、大きな影響を与えたのは、やはりシュナイダートロフィーのようだ。

このレースは、五年間に三回優勝でトロフィーを取りきりという規則だった。レースは、アメリカのカーチスの連勝以外、イギリスとイタリーの一騎打ちで、イタリーが4回、イギリスが5回で、トロフィーはイギリスが取ったが、こいつはフィアットvsロールスロイス・エンジンの戦いでもあった。

現在、シュナイダートロフィーは、ピカデリーの王立航空クラブに保管されている。この英伊の戦いは、エンジンの信頼性の結果でもあった。毎回エンジントラブルに悩むマッキに対して、ロールスロイスは何時も快調だった。

シュナイダートロフィーは宿敵イギリスに持って行かれたが、その後マッキがエンジンの調子を取り戻すと、数々の記録を塗り替えながら、初めて700km/hの壁も突破、この記録は水上機の記録では未だに破られてはいないのである。

シュナイダー杯を勝ち抜きスーパーマリン機を開発のイギリスのミッチェルが、この機体をベースに開発したのが、バトル・オブ・ブリテンでドイツ機を追い払った、WWII中の名戦闘機スーパーマリン・スピットファイアなのである。(写真トップ:スピットファイア戦闘機/手前2機(奥はハリケーン戦闘機):WWII中の英国主力戦闘機。バトル・オブ・ブリテンvsメッサーシュミットで話題。ロールスロイス・マーリン1030馬力は最終的にRRグリフォン1450馬力になり、最高速度640km/h)

が、開発した戦闘機が、WWIIでイギリスを勝利に導く大手柄を立てたことを彼は知らない。天才技師ミッチェルは、開戦前に37才でこの世を去っていたのである。

ピストンで混合気を圧縮、燃焼させる内燃機関が19世紀末に誕生して、20世紀に大発展を遂げる過程を長々と書いてきたが、振り返ってみれば内容は支離滅裂、脱線し放題、よくぞ皆様お付き合い頂けたものと、御礼申し上げます。

セスナ182型245馬力・三本固定脚型:脚1本当たり空気抵抗で5マイル減x3=15マイル(27km/h)も速度が落ちる。機体は小生飛行人生最後のマイプレーン。JA3995/熊本空港

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