【車屋四六】元祖ストリッパーはコロナ
【車屋四六】元祖ストリッパーはコロナ

コラム・特集 車屋四六

近頃、女の裸は、珍しいものではない。が、団塊の世代の男なら、未だ見たい、見た、嬉しい、という傾向が見られる。更にさかのぼり、昭和一桁生まれともなれば、見てはいけないものを見た、ラッキーといった感じである。

それはWWII以後のことのようで、戦前、私が子供頃には、海ではオッパイ丸出しの海女が貝を捕ってたし、田舎の温泉は男女混浴。いたるところ人前で赤ちゃんに乳房を含ませていた。男のオッパイ願望は、幼児時代の母と子という原体験が尾を引いているのかもしれない。

戦争中、乾布摩擦が奨励された。手拭いを固く丸めて裸の上半身を擦るのだ。が、それを女学校(女子中高生)でもやっていて、小学生時代友達の家で遊んでいると、上半身裸の姉さんが通るので見ていると、陽当たりの良い庭で乾布摩擦を始めた。

その頃、裸が気にならなかったのは、子供だったからからかもしれない。昭和20年、終戦の年、私は小学校六年生だった。男が裸を喜ぶようになったのは、戦後になってからだ。

日本占領の進駐軍は、男女平等同権を教えたが、奴らの雑誌、写真には、我々には淫らに見える女の裸が一杯、何とも矛盾していた。

いずれにしても男共は裸に飢えていた。で、裸初公開は昭和22年の新宿帝都座。舞台で裸女が動けば猥褻、動かなければ芸術?と訳のわからぬ理屈で額縁の中でジッと動かず、という額縁ショーだった。が全裸ではなく極小ビキニ風下着で、今なら全く問題ないが、それでも金を払って興奮しに出かけたのである。いずれにしても、このあたりが日本の劇場ストリップの始まりだろう。

昭和25年には、金粉ショー。下の三角下着もろとも金粉を塗りたくった踊り子。昭和27年頃になれば、上半身裸の踊り子が堂々と舞台に立っていた。下の毛御法度がオカミの解釈だった。

男が好むストリップとは、どうやら日本語のようで、アメリカではストリップ・ティーズと云うようだ。「早くヌゲーッ」は古今東西、ストリップ劇場で上がる男の叫び。ちらりちらりと見せる仕草はするが、肝心なところは見せず、脱ぎそうで脱がず、客を焦らせ、想像力を膨らませようというのが踊り子のテクニックである。

脱ぐまでに、やたら時間をかけるから、いらいらした客が叫ぶことになるのだが、そんな手法はコマーシャルにも流用されている。自動車会社も、新車登場時によく使うことがある。ティーズ=じらしのテクニックである。

この、じらしのテクニックを宣伝に利用するのを「ティーザーキャンペーン」と呼ぶ。日産で有名なのは初代マーチ。モーターショーで登場の無名の新型車に、全国から名前を募集、決めるまでに1年も引っ張った。

銀座四丁目の角、日産ギャラリーにリボンを掛けた白い大きな紙包み”中から美女が出てくるのかな?”と思わせぶり。やがて中から出てきたのがシルビアだった。

暫く発売が途絶え、ファン待望のスカイラインのGT-Rが再登場する時にも”もうじきにGT-Rが甦る”とかなり前から流し目を送ったりもした。

が、日本自動車業界でのティーザーキャンペーンは、日産が元祖ではないようだ。私の記憶では、トヨタ元祖だったと思う。

1960年(昭35)の2月、はて何だろう?と訳のわからぬ広告は、2本のタイヤだけが写真で、横からのボディーはシルエットだけで白抜きという、奇妙さが人目を引きつけた。その宣伝文句が「トヨペット・コロナ!! Oh!! アラッ!! スゴイ!!」に付け加え「新しくないのはタイヤが4つあることだけ」だった。

白抜きコロナの広告:このような広告が、新聞、雑誌に登場して話題になったが、自動車業界でのティーザーキャンペーンの始まりだと思う

1ヵ月ほどで白抜き部分が埋まり、それがPT20型二代目コロナの登場だった。トヨタが目の上のタンコブ的存在だった、ダットサン打倒を目指して開発した新兵器だった。

二代目が誕生した昭和35年というと、安保闘争、三池闘争、山谷騒動、日本中が争乱に明け暮れした1年だった。浅沼稲次郎社会党委員長が公演中、若者に脇差しで刺殺されたのも同じ年。厚生省の発表で、国民の四分の一が栄養不足というのだから、日本中がイライラしていたのだろう。

が、この頃になると、お茶の間にTV(白黒)が普及し、当時の人気番組と視聴率を並べてみると
1.プロレス(NTV) 38.2%
2.ジェスチャー(NHK) 24.0%
3.お笑い三人組(NHK) 22.4%
4.三党主催討論会(NHK) 22.0%
5.ララミー牧場(NET) 21.8%
6.モーガン警部(NTV) 20.9%
7.私の秘密(NHK) 20.8%
8.事件記者(NHK) 19.6%
9.ダイヤル110番(NTV) 19.6%
10.スポーツニュース(NTV)19.1%

ローハイド(NET)、名犬ラッシー(TBS)、ザヒットパレード(フジ)なども人気番組。

二代目コロナは、初代と異なり、とても斬新だった。が、実はこの二代目が、初代になるはずの作品だったのだ。そうなっていれば、後の世に云う”BC戦争”の様相もかなり違ったものになっていたかも知れない。

その辺りは、次回に。

革新的スタイリング:乗降楽チン傾斜Bピラー:左右対称好視界ワイパー:斬新後部番号プレート部から給油:トランクにはゴルフバッグも。良いことずくめを宣伝のイラスト