EDC+直噴ターボで質実剛健な走りを獲得 ルノー・カングー試乗記

試乗レポート

ルノー・カングーは、日本において唯一無二のスタイルとユーティリティを持ち、限定車などで展開される豊富なカラーバリエーションなど〝楽しみ方〟が多いモデルとして人気を集めている。これまで1・2㍑直噴ターボエンジン搭載車には6速MTのみ設定だったが、新たにデュアルクラッチ式6速AT(EDC)の新グレードが追加され、その走りをカングージャンボリーが毎年開催される〝聖地〟山中湖周辺でチェックした。

 

これまでカングーのAT車といえば、1・6㍑NA(最高出力105PS/最大トルク15・1㎏m)に4速ATの組み合わせだったが、この1・2㍑直噴ターボは最高出力(115PS)、最大トルク(19・4㎏m)ともにアップしており、EDCとの組み合わせによる完成度の高い走りは、走り出した瞬間に感じとることができた。発進直後から十分なトルクを発揮しスムーズにクルマを加速させ、なおかつシフトアップも淀みなく行なわれるので、排気量ダウンのハンディを感じさせない。アクセルレスポンスも良好でストレスを覚えることはなく、高速での合流、追い越し車線や登坂路での走行も不足はないだろう。一般道で流れに乗って走るようなシーンでは、常に1500回転前後をキープするので、エンジン音も耳に届かず室内の静粛性も高い。むしろ、聞こえるのはロードノイズや風切り音だ。

また、全高が1800㎜を超えることから、コーナーでは若干ロールはするものの、トールワゴン系にありがちなふらつきを感じることは少なく、むしろ踏ん張りの効いた安定感の高いコーナリングが印象的だ。このEDCモデルにパドルシフトが装備されていたら、ワインディングでもさらに楽しめるだろうと考えてしまうほど、その独特のボディフォルムからは想像できないしっかりとした走りを見せてくれた。

クルマとドライバーの接点、フロントシートはシートバック面が大きく、座り心地やコーナリングでも乗員の姿勢が安定する。後席は足元だけでなく、高い車高を生かした広々とした頭上空間を持つのも特徴で、余裕のある収納スペースが確保されているのが好印象。

また、運転席と助手席の背面に備えられたシートバックテーブルは、小さい子どもがいるファミリーには重宝しそう。さらに、後席の両端にチャイルドシートを設置して真ん中の席にお母さんが座るという、カングーならではの使い方もできる。また、後席を倒せば広大なスペースが生まれ、マットなどを敷けば車中泊も余裕でこなすだけでなく、トランスポーターとしての利便性も高い。

 

背の高いカングーだが全長は4280㎜と、ホンダ・ヴェゼルやマツダ・CX-3とほぼ同寸法であることに加え、運転席からの視界もよく全幅1830㎜のクルマを運転しているとは感じられず、幅の感覚に慣れてしまえばクルマの扱いにもあまり苦労しないだろう。

 

カングー独自のおしゃれなたたずまい、優れた利便性、そして力強い走りを見せる1・2㍑直噴ターボユニットに6速EDCが搭載され、より多くの人が手にしやすくなった。これまでMTのみで躊躇していた方、あるいは、ありふれたファミリーカーでは飽き足らない方にはぜひ一度試乗してその魅力を感じてほしいモデルだ。

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