【車屋四六】全生産量20台という貴重品

車屋四六 コラム・特集

昔の潜水艦は、ディーゼルで水上、水中は電動機だから速度が7ノットほどと遅く、蓄電量低下で、水上でディーゼル走行充電が必要という弱点があった。(1ノット=1.8km/h)

そこで発明発想得意なドイツ人は、ディーゼルで水中走行しながら充電もという奇想天外を考えた。で、パイプを潜望鏡様に水上に出して外気導入という新手段を考えた。名付けてシュノーケル、ダイビングで使うシュノーケルの元祖である。

で、ドイツの潜水艦Uボートは、充電しながら水中を高速走行可能になる。が、科学の進歩は際限ない。戦後登場のアメリカのノーチラス号は外気も電池も不要。20ノットの高速と何ヶ月も水中に居られるようになる。原子力潜水艦の誕生である。

原潜誕生の55年、潜水艦も飛行機も造れなくなったドイツに、画期的スポーツカー誕生。ポルシェ550スパイダーである。
48年誕生のポルシェ356から、ルマン24時間レースを目指して開発した高性能スポーツカーだった。

独特な空冷水平対向四気筒は、OHCから4本のカムシャフトを持つDOHCに進化する。
ちなみに、ルマンに送り込んだ二台は、クラス優勝で目標達成。

いちやく有名になったスパイダーは市販され、アメリカで人気者に。将来を注目された異色の俳優、ジェームス・ディーンも購入。ディーラーから待望のスパイダーを引き取った帰路、事故を起こして死亡した話しは有名である。

550の結果に調子づいたポルシェは、GTレース用も開発した。
ポルシェ356Bカレラ1600GTL。写真(上)は、フランクフルト郊外のロッソビアンコ自動車博物館で見つけた逸品。
この博物館、オーナーが元レーシングドライバーだからこそ収集できたという、貴重なレーシングカーを揃える博物館だ。

問題のカレラ1600GTL、ボディーの美しさに見とれたが、ザガートのボディーと判って納得。が、更に解説を聞くと話しはややこしい。ボディー発注はパルシェからザガートではなく、アバルトから。

アバルトはご存じ、今でも活躍するイタリアの有名チューナーだが、そこから推測すると、ポルシェはGT製作をアバルトに発注し、アバルトがチューンアップしたシャシーにザガートがボディーを架装したということなのだろう。
いずれにしても、60年、61年、二年間で20台しか造られていない、貴重品ということになる。レースでの活躍は63年まで。

ファクトリー用356のレーシングカー

一連のアバルト作品に見られる、目立つリアフード上の空気取り入れ口が、この写真では見えないのが残念だ。
そのフード下に隠れるエンジンは1588ccで、当時では驚異的115馬力という出力を絞り出しているのも、アバルトの手腕なのだろう。

1600GTLはルマン24時間レースにも出場しているが、有名なのは、ミュルサンヌのストレートを、220.8km/hという高速で駆け抜けた記録である。

スパイダーと同じ頃に誕生した原潜もポルシェ共々進化をして、ポルシェGTLが生まれた60年には、3500トンのノーチラスから、5662トンのポラリス型に進化する。
この原潜は、83日と10時間で世界一周、しかも潜水したままという記録を打ち立てた。ということは、何処に潜むか判らない米原潜は、世界の何処からでも原爆攻撃可能ということの誇示だった。

1600GTL誕生の60年は昭和35年。日本ではコロナが二代目に、初代セドリック、三菱500、マツダR360クーペが誕生した頃だ。

市販型ポルシェ356スパイダー/後部エンジンカバーが大きく開いている

おすすめ記事