誰もが楽しめるハイパフォーマンスモデル「レクサス GS F」

試乗レポート

GSのマイナーチェンジと同時に登場したのが「GS F」。GSをベースにV8・5Lエンジンを搭載したハイパフォーマンスモデルだ。ちなみにレクサス「Fモデル」はLFAを最頂点とするが、これは既に販売は終了済。というわけで現在新車で手に入れられるモデルとしては、2ドアクーペの「RC F」と、この4ドア・スポーツセダン「GS F」が最もホットなモデルということになる。

 

搭載するパワートレーンは最高出力477psのV8エンジン(写真左)、パドルシフト付の8速ATなどRC Fと共通する。RC Fではオプション装備だったTVD(電子制御式トルクベクタリングディファレンシャル)がGS Fでは標準装備になるなどの違いはあるが、基本的には共通するところが多く、ほぼ4ドア版のRC Fといえるだろう。スポーツカーらしいスタイルのRCも魅力的だが、より実用的な4ドアセダンでもそのパフォーマンスを楽しめるというのは、多くのユーザーにとって朗報だ。「日常からサーキットまで、誰もがシームレスに走りを楽しめる」という「F」のフィロソフィーをより体現したモデルといえる。

さて、今回は富士スピードウェイとその周辺で試乗したが、その走りはサーキットでも、公道でも文句のつけようがなかった。特に秀逸なのは、ドライバーの操作に対する反応が機敏かつ自然なこと。現在のハイパワーなスポーツセダンの多くは強力なターボエンジンを搭載し、ちょっと踏んだだけで背中を押されるような大パワーが急激に出てくるのに対し、NA(自然吸気)エンジンを搭載するGS Fはアクセルの踏み量に対するパワーしか出ない。大パワーのエンジンを思う通りに細かく制御できるのは、NAエンジンならではだ。


このためサーキットを走り慣れたドライバーはもちろん、初心者でも自分のレベルに合わせて走りを楽しむことが可能だ。これは足まわりの余裕も同じ。ややオーバースピード気味にコーナーに進入しても、一気にコントロールを失わうということもないので、安心してサーキットを走ることができる。もちろん、これはその後ろに多くの車両制御が働いているからこそなのだが、それを感じさせないのもレクサス流といえるだろう。まさに「誰もが楽しめる」ハイパフォーマンスなのである。絶対的な速さを求める、あるいは非日常のパワー感を魅力とするならばターボエンジン車も悪くないが、それはレクサスの世界とは少し違うもの。ドライバーのわずかな操作にも忠実に応えてくれる感覚こそ“楽しい”大人のスポーツセダンである。


もちろん、快適性も極めて高い。シートはサーキット走行も想定しホールド性が高いが、乗降のしやすさも考慮されており、日常使いにも不満の無いもの。インパネを中心にインテリアは上質感に満ちており、レクサスの他のモデルから乗り換えても違和感がない。さすがに、足回りはやや硬めに感じられるが、公道をノンビリ走らせている時は、いい意味で普通のセダンである。シャープ過ぎないステアリングへの応答性も相まって、街中でもアクセルワークに特に気を使わずに走れる“懐の深いモンスターマシン”だ。スポーツモデルというのではなく、いまや世界的にも数少なくなったNA大排気量セダンとしての選択も有りである。(鞍智 誉章)

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