家族で行こう! きままにクルマ旅《特別編》(2014年7月 紙面掲載)
SUBARU レヴォーグで挑戦 東京〜能登半島1000kmの旅〈前編〉

レジャー ドライブ

文・写真:吉田直志(automobile columnist)

いつもは東京近郊から日帰りできるドライブルートを紹介しているこのコーナー。今回は特別編として、SUBARU「レヴォーグ」にて能登半島まで足を伸ばすことにした。ご存知のようにレヴォーグはその走りだけではなく、燃費性能もアドバンテージとしているモデルであり、無給油で1000km走れることを謳っている。ならば、その実力を試してみようと特別編のロングドライブに旅立った。

東京から能登半島までは、高速で関越道~上信越道~北陸道を利用するルートが一般的だが、今回はアルプスを越える(安房+平湯トンネル経由)最短ルートを選択。能登半島まで500kmほどだ。走行距離1000kmを目的とするならば、このアルプス越えのルートのほうがぴったり。しかし、平湯トンネルは標高1445mと高所にあり、低燃費を狙うには好ましくないが、あえてこのルートにチャレンジし、レヴォーグは低燃費を語れるモデルなのかを厳しくチェックすることにした。ちなみに、レヴォーグの燃料タンク容量は60Lで、無給油で1000kmを走り抜くには、平均燃費16.6km/L以上としなければならない。

梅雨空から一転、青空に誘われるまま能登半島最北端へレヴォーグを走らせた

 

高速のみなら1000kmは可能

東京から松本ICまでは中央道を利用したが、上り基調のルートゆえに燃費はそれほど伸びず、18.5km/Lに止まったが、高速道路だけを走れば1000km無給油走行が可能なことは分かった。松本ICを下りてから平湯トンネルまで一気に上るため、1.9km/Lのリード(18.5km/L―16.6km/L)では心許なかったのだが、その予感は的中し、国道158号線を走るにつれて燃費は落ちていき、簡単に今回の目標ライン16.6km/Lを割ってしまった。それもそのはず、松本市から一気に標高800mを上るのだから仕方ないこと。

きつい傾斜とタイトなコーナー

ところが、予定通りのルートを走っていればいいものを、せっかく乗鞍へ来たのだからと、乗鞍温泉から白骨温泉へと抜けるルートへと入ることにした。そう、さらなる上りが待ちかまえており、燃費を狙うには無謀なルートだ。

しかし、このルートは自然豊かであることはもちろん、何より乗鞍岳を眺められることから、個人的には大好きなルートで、外すわけにはいかなかった。ここは、かつては上高地乗鞍スーパー林道と呼ばれ有料だったが、現在は無料となっている。きつい傾斜はもちろん、路面は荒れ、細かなワインディングもあるが、レヴォーグは不足を感じさせることなく、快適性を失うことなく、グイグイと上っていく。こういったシーンでは、ターボの扱いにくさがあると思われるかもしれないが、新設計となる1.6L直噴ターボエンジンのフィーリングはNAライクであり、むしろ扱いやすさが印象に残った。

低負荷走行で燃費を改善!

その後は、岐阜県から富山県砺波平野へと抜けるルートを選んだ。ここはずっと下りが続き燃費が改善していく。驚いたことに、このエンジンは、下り坂のような負荷を大きく掛けずに走るシーンでの区間燃費は25km/Lを超える。感覚的には30km/Lを超えていたように感じた(表示は25km/Lまで)。この日の目的地、金沢到着時点での平均燃費は16.3km/L。残念ながら最低燃費ラインをわずかに下回っていた。

最終目的地である能登までは金沢から約100km。能登には、能登有料道路という金沢市から空港方面へと向かうルートがあったが、現在では「のと里山海道」と名称を変えて無料化され利用しやすくなっている。もちろん、このルートを利用して輪島へと向かうことにした。

かつて有料道路であったこともあり、クルマの流れは速い。燃費運転を貫くレヴォーグは、車線が1車線となってからはひたすらに後続車のプレッシャーに耐えることになった。しかも、輪島へ向かうルートは上り基調で、燃費はどんどん落ちていき、さらなるプレッシャーがのしかかってきた。

 

いいクルマと、いい風景は、もっと走りたくなる

「のと里山海道」を走り切り、能登に到着すると、これまでとは一転して青空が出迎えてくれた。本来なら、ここから東京へと戻るはずだったが、この青空に誘われて能登半島をもう少し巡ってみたくなった。もちろん、レヴォーグをもう少し運転したいという衝動もあってのことだ。輪島からは海沿いの国道249号線を行く。能登半島ならではのダイナミックな風景にひたすらに感激しつつも、気づけば燃費は16km/L台を回復。海岸線ルートに多いコーナー、そしてアップダウンも、レヴォーグはその素直なハンドリングと、的確なパワーによって海岸線のドライブをさらに愉しくしてくれた。そして、輪島から走ること約50km、とうとう能登半島の最北端「禄剛埼灯台」に到着。いいクルマと、いい景色は、ついついその先まで走りたくなるものであり、途中にドライブ取材もあり、片道600kmとなったが、走った距離以上の充実感もあった。

さて、肝心の燃費は? 総走行距離が1000km以上となったため無給油走行は不可能となったが、それを実現できる燃費値(16.6km/L)以上を達成し、それが可能であることを証明したかった。それには復路ですべて高速道路を走ればいいだけのこと。ところが、筆者の無謀たる性格(?)からか、再びアルプス越えのルートを選択。何はともあれ、東京に着いてみれば、16.9km/Lを達成していた。

トータル燃費は16.9km/Lを記録した。走行可能距離が260kmと表示されているのは途中で給油しているため

単純に、走行距離1200kmで平均燃費16.9km/Lという結果だけ述べると、大したことないように聞こえてしまうかもしれないが、1200kmの内訳は高速道路(旧有料道路含む)760kmに、なんと下道を540kmも走っているし、しかもその下道には標高1450mの山越えも含まれている。そして、何よりも、スポーティを語れるモデルでこの燃費を達成しているのだから、驚きだ。

以前のレガシィのサイズ感を取り戻し、グランドツーリングカーたるコンセプトをさらに向上させたレヴォーグ。全長4690mm×全幅1780mm×全高1485mm(1.6GT Eyesight)

実は、レヴォーグ1.6Lターボは、パーシャルスロットルでは65km/Lぐらいを境に、燃費が悪化し始める。そう、高速道路を多く走るよりも、信号のないような国道をまったりと走るほうが低燃費を期待できることも分かった。時に燃費運転をし、時にスポーティに走らせ、時に予定外のスポットに立ち寄ってみるドライブは、高速道路を一気に走り抜くドライブとは違った愉しさがある。

レヴォーグは、燃費がいいから、そして、走りが愉しいから、ついついその先へと誘う。まさにグランドツーリングカーたるポテンシャルにあふれていた。レヴォーグで巡った能登半島のドライブスポットの紹介は次回に。

きままにクルマ旅 記事一覧はこちら

ドライブデータ

試乗車=SUBARU レヴォーグ 1.6GT EyeSight
パワーユニット=エンジン排気量1599cc、リニアトロニック(マニュアルモード付CVT)、4WD
乗車定員=5名
全行程走行距離=約1200km

立ち寄りスポット[マップコード]

・平湯トンネル(トンネル前PA)[620 650 612*11]
・のと里山海道[135 333 285*80]
・禄剛埼灯台[913 114 079*87]

※「マップコード」および「MAP CODE」は、株式会社デンソーの登録商標です。
※ナビの機種によっては、高分解能マップコードに対応していない場合があります。

プロフィール
吉田直志/automobile columnist

四輪駆動車専門誌、デジタルカルチャー誌の編集部を経て、フリーライターに。現在は新型モデルの評価を軸に、自動車雑誌のほか、ファッション誌にも寄稿。

(本稿は2014年7月に新聞「週刊Car&レジャー」に掲載)

Tagged