悪路での走破性・乗り心地は別次元

試乗レポート

レクサスSUVの最上位モデルとして登場したLX570。コンパクトSUVのNX、ミッドサイズのRXと合わせ、これでレクサスのSUVラインアップも各サイズが出揃ったことになる。

ただ、乗用車ベースのクロスオーバーSUVであるNX、RXに対して、LXはラダーフレームを持つ本格クロカン4WD。このためサイズの違い以上に性格の違いは大きい。もちろん乗り味もまったく異なっており、ステアリングやアクセル、ブレーキなどの操作に対するダイレクトな反応が心地良いのがRXであるとすれば、LXはドライバーの操作に対してすべてがゆったりとした印象だ。その代り悪路での乗り心地、走破性の高さはRXの比ではない。基本的な性格がまるで異なるから、RXの上位として見るのではなく、別カテゴリーのモデルととらえる方が正解である。

さて、LXのベースとなっているのはランドクルーザー。スピンドルグリルが装着されたフロント周りなど、見た目は大きく異なるものの、ラダーフレーム構造や3列シートを備える居住空間など、基本的なパッケージに大きな違いはない。マルチテレインセレクトや4Wheel AHC(車高調整機能)&AVS(減衰力制御機能)といった最新の4WD技術も同じく搭載されている。

ただし、エンジンはランクルのV8 4・6ℓに対して、LXではV8 5・7ℓを搭載。ランクルの最高出力318PS、最大トルク46・9㎏mと比べ、LX570は最高出力377PS、最大トルク54・5㎏mと動力性能が高められており、車両重量約2・7tという重さを差し引いても、数値的にはかなり余裕のあるスペックを誇る。

しかし実際に試乗してみると、数値から想像される暴力的なパワフル感はなく、パワーの出方はきわめてジェントル。滑らかに発進し、後は自然なフィーリングで加速していく。このため高速域はもちろんのこと、街乗りでも扱いやすい。ゆったりと快適なロングツーリングを楽しむ大型SUVらしい走りだ。今回はオフロードでの試乗はできなかったが、低速域での豊かなトルクやしなやかな足回りは、そういったシーンでも有効だろう。

一方、室内空間はレクサスらしく上質さにあふれている。インパネ周りには本木目と革がふんだんに用いられ、手触りもソフト。落ち着いた雰囲気でプレミアム感も十分だ。シートに座った姿勢はクロカン4WD系らしくややアップライト気味となるが、このために視界も広く、ボディ先端の見切りもいいので、大柄ボディながら運転しやすい。ナビは12・3インチという非常にワイドな横長ディスプレイを採用するが、前方視界を遮ることなく情報を確認でき、これも好印象だ。

反面、ちょっと残念なのは後席の居住スペース。横方向の広さは十分だが、前後のスペースはやや狭く、この辺りはランクル同様。とくに3列目シートは近距離用と割り切った方が良さそうである。(鞍智 誉章)

 

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