家族で行こう! きままにクルマ旅(2015年9月 紙面掲載)
マツダ CX-3で巡る 八ヶ岳の隠れ名スポット

レジャー ドライブ

文・写真:吉田直志(automobile columnist)

酷暑もあっという間に過ぎ去り、早くも秋の気配が感じられたかと思ったら、一気に深まってきた。早々と秋を愉しもうと、八ヶ岳山麓を訪れることにした。八ヶ岳周辺については何度も紹介してきたが、今回は、その中でも隠れた名スポットがある山梨県北杜市の長坂町に焦点を当ててみることにした。ドライブに連れ出したのはマツダ「CX-3」。コンパクトクロスオーバーというキーワードを持ちながらも、走り、乗り味、そしてデザインに新しい提案があるモデルだ。その魅力を、名スポットを巡りつつ、探ることにした。

東京から北杜市長坂町へのアクセスは中央自動車道を利用するが、今回は長坂町のあるICではなく、その手前の須玉ICで下りることにした。東京から距離にして約150㎞で、2時間半ほどで到着できる。

既存のクロスオーバーモデルとは異なり、質感、スポーティさなど新しさを打ち出したCX-3。ボディサイズは全長4275mm、全幅1765mm、全高1550mmで、街乗りに最適なコンパクトサイズを特徴とする

ディーゼルエンジンを搭載したCX-3は、発進直後から太いトルクを発生させ、力強い加速をみせる。それは、まさにコンパクトカーという概念を覆すような走りであり、さらにターボを採用していながらタイムラグや唐突なトルク変動を見せることなく、スムーズさすら備えており、驚きの連続だった。そして、高速走行では、そのトルクがゆとりをもたらしており、さらに素直さをベースにしながら質感を極めたシャシーチューニングも手伝って、快適さを上手くバランスさせていることが印象に残った。

国蝶であるオオムラサキの生態を観察できる施設を中心に、田畑や雑木林などの自然を愉しむことができる「北杜市オオムラサキセンター」

と、CX-3の走りに感心しているうちに須玉ICへと到着。まずは「北杜市オオムラサキセンター」を訪れることにした。ここは、ビオトープや水田、そして雑木林のある自然公園を併設した施設でまさに自然を学ぶことができる、体験できる施設だ。

長坂町は八ヶ岳の裾野を南北に広がる町だが、生活道路ながらアップダウンやコーナーが多くある。そんな道でCX-3は素直なシャシー性能とディーゼルエンジンの豊かなトルクを伴って、軽快に走っていく。次に向かったのは、中央道の須玉~長坂IC間を走っている時に目にする「北杜サイト太陽光発電所」だ。当初は、検証実験が行なわれていたが、現在では北杜市が運営。施設内部の見学には事前登録が必要だが、そばには展望台が用意されており、施設外観を眺めることはできる。

中央道のそばにある「北杜サイト太陽光発電所」。展望台からはその全景を見ることができる。正面に八ヶ岳が見えるはずだったが、取材当日は雲の中に…

CX-3のスポーティなドライビングは、意図的に仕立てられたというよりは、そもそも基本性能に優れているからだな……、なんてことを発見しつつ、やがて「北杜市郷土資料館」、そのそばにある「清春芸術村」へと到着。ここは資料館、美術館という施設だけではなく、景色も楽しむことができるところ。残念ながら当日は悪天候だったが、青空が広がる日には甲斐駒ケ岳を望むことができるため、天気のいい日にまた訪れてみたいと思った。

「三分一湧水」は、下流の三つの村に水を均等に配分するために武田信玄が作ったと言われる堰。中央に三角柱の形状をした石を配置し、水を公平に分けている

もう少しCX-3と走りたいと、長坂町の北にある「三分一湧水(さんぶいちゆうすい)」を目指して、八ヶ岳を上っていくことにした。近くにある三分一湧水館にクルマを停めて、水路に沿って遊歩道を進むと、水の分配を巡る争いを収めるために、武田信玄が三角柱の石を用いて三方向へと水を公平に分けたという堰へと着く。沸き出でる水に自然の豊かさ、均等に分けるという人間の知恵とを感じ、しばし、三つに分かれて流れゆく様に見入ってしまった。

あて、今回のドライブのもうひとつの目的(実はメインだった……)は、噂で聞いていた長坂駅の近くにある「ブルーレイコーヒー」のカレーを食べることにもあった。到着してクルマから下りると、お店の中から地元の人たちの楽しそうな会話が聞こえてきて、まさに地元の人たちの集いの場となっているようだ。期待のカレーは、有機・無農薬で作られた野菜や米といった素材の良さはもちろん、3~4日間煮込み続けられて作り上げられたもので、まさに愛情が込められた“作品”かのような深い味わいだった。

「ブルーレイ」は長坂駅と長坂ICを結ぶ県道32号線沿い、長坂上条交差点そばにある/「ブルーレイ」のビーフカレーセット。タマネギをたくさん使って数日掛けて煮込んだというカレーは、ほろりと崩れる牛肉、無農薬・有機栽培された米を八分づきしたご飯と相まって、贅沢な味わい。ドリンクとのセットで1000円

さらには、イタリアのチンバリ社製のエスプレッソマシンによるカプチーノまでついて1000円とのこと。採算合いますか? とついつい聞いてしまったほどだったが、シェフとマスターとの心和む会話もあって、満腹感だけではなく満足感も増した。ちなみにカレーは手間がかかることから、常にあるとは限らないとのこと。問い合わせをしてから訪れることをオススメしたい。

今回のドライブは、実は、天候に振り回されて目的地を変えたりしたこともあり、紹介できるような記事にできるかといった心配もあった。しかし、結果として、CX-3の楽しさあふれるドライビングと、カレーの豊かな味わいとに、心まで癒されるドライブとなった。もちろん、低燃費と軽油の単価の安さがもたらす、経済的満足感も得られたことはいうまでもない。燃料費は、アップダウンのある道をあちらへこちらへと350kmも走ったにも関わらず、約1100円だった。

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ドライブデータ

試乗車=マツダ CX-3 XD ツーリング Lパッケージ(2WD)
パワーユニット=ディーゼルエンジン1.5Lターボ、6速AT、FF
乗車定員=5名
全行程走行距離=約350km

立ち寄りスポット[マップコード]

・北杜市オオムラサキセンター[167 767 063*66]
・三分一湧水館[218 148 664*45]
・ブルーレイコーヒー[167 884 269*45]

※「マップコード」および「MAP CODE」は、株式会社デンソーの登録商標です。
※ナビの機種によっては、高分解能マップコードに対応していない場合があります。

プロフィール
吉田直志/automobile columnist
四輪駆動車専門誌、デジタルカルチャー誌の編集部を経て、フリーライターに。現在は新型モデルの評価を軸に、自動車雑誌のほか、ファッション誌にも寄稿。

(本稿は2015年9月に新聞「週刊Car&レジャー」に掲載)

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